「違法ではないが適正ではない」は名言か?

 舛添の佐々木善三弁護士の記者会見での人を見下し、木で鼻を括ったような答弁に違和感を覚えた人も多いだろう。私もその一人である。
 「違法ではないが適正ではない」とはうまいことを言うもんだ。以前は”グレーゾーン”、”証拠不十分”によって罰することができない。というのが検察のコメントであった。今回は検察でなく弁護士という立場から依頼人の思い切り寄ったコメントだから仕方ないかと思いつつ、弁護士法を見たら第1章第1条に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」とあった。佐々木善三弁護士にはもう一度読み直してもらいたいものだ。

  実は大事なことは「違法ではないが適正ではない」の続きにある。「だからいい」とするか、「だけどダメ」というかの2つに分かれ道があるのだ。

 この世の中で、法律なんていちいち読んで生きている人なんていない。それでも秩序正しい社会を日本では実現しているではないか。法よりも先にモラルというものがあるから世の中は成り立っている。

  私の生きている実業の社会でも、似たようなことが起きている。特に21世紀に入って「コンプライアンス」ということがやたらと言われて形式主義にとらわれた以上にビジネスマンが自分の良心とは違った行為であっても”生活のため、会社のいう通りに”を受け入れてしまって、相手の側のことを考慮しない行動には目に余るものがある。

 先日 あるビジネスの場でもそんなことがあった。

私の仕事はビルや工場にある設備、機械をメーカーを問わずネットワークでつないでいくことをしている。ユーザーから依頼があり某大手電機メーカーの機械とつなぐことになったため技術的な仕様の打ち合わせ会議で事は起きた。
 某大手電機メーカーの企業方針が「囲い込み」なので他社でその上どこの馬の骨とも分からないちっぽけな会社と接続させたくないという態度で臨んできた。「そんなことしたら、機械の保証はしない。」さらに「ネットワークセキュリティ上危険極まりない」と脅しをお客さんにかけてくる。お客さんのほうもITの素人なので大抵この脅しに負けて諦めてしまう。たまたま今回は私も同席していたので、ひとつひとつ技術的な根拠を問いただしリスク回避方法を検討していった。困ったメーカー側は「工場に聞いてみないと自分たちでは分からない」と答弁した。すかさずお客さまから「ならば今この場で工場に電話して確認してください」と言われ、そのメーカーの担当者が電話したところ「それまで危険できない」一点張りだったのが一転して「工場側もいいと言ってます」という発言をした。オイオイ散々長い時間主張してきたことが電話一本でひっくり変えるのかというため息が参加者からもれた。
 それでもメーカー担当者は、次の手を打って抵抗を続けた。横で聞いていた私はまるで舛添の記者会見の再現場面を見ている思いをした。
 彼らは社内の上だけを見てお客さんを見てない。お客さんの声を社内持ち帰って反映させるより、社の意向を嘘をついてもお客さんに飲ませるほうが大事だと思っているということを肌で感じた。

  本当にこれでいいのだろうか、日本を代表する企業のやることかなのか。だから日本が停滞するのだとつくづく感じた次第である。